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結膜炎(けつまくえん)

結膜とは、角膜以外の前方の眼球と眼瞼(まぶた)の裏側まで覆っている粘膜で、眼球と眼瞼を結び付けていることから結膜と呼ばれています(図3)。

図3:前眼部の断面図

眼瞼結膜はまぶたの裏側を覆い、眼球結膜は眼球前面の強膜を覆っています。円蓋部結膜は眼瞼結膜と眼球結膜を連絡している部分です。 健康な人の結膜はツルツルとして光沢があり、濡れています。これは結膜杯細胞から出る粘液と副涙腺であるウォルフリング腺およびクラウゼ腺から出る涙液が、眼球表面を潤しているからです。 ひとくちに結膜炎といっても、その原因はさまざまです。細菌性、ウイルス感染によるもの、アレルギー性がその代表的なものです。アレルギー性結膜炎については、春季カタルで説明します。

細菌性結膜炎

細菌性結膜炎は、原因となる菌は黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌、肺炎球菌などです。化膿性眼脂が出る場合は新生児では産道感染による淋菌が考えられ、成人でも性感染症として発症します。いずれも進行が早く、角膜炎から角膜穿孔(穴の開くこと)に至ることもあるので注意が肝腎です。 症状は、一般的には急に目やに(眼脂)が増え、眼球の結膜(白目)が赤くなります。結膜の充血は目頭や目じりに近いところほど強く、まぶたの裏の眼瞼結膜も充血します。結膜の浮腫(水ぶくれ)や異物感、掻痒感(かゆみ)、羞明(光が異常にまぶしい)、熱感(発熱の感じ)が起きたり、重症の場合は眼痛を伴うことがあります。 検査では、眼脂の中の細菌培養や、結膜からとった細胞、眼脂構成成分の白血球の顕微鏡検査などで原因を特定します。細菌性結膜炎のほとんどは、抗菌点眼薬によって治療します。ただし、淋菌性結膜炎の場合は、抗菌点眼薬を頻回(数多く)点眼すると同時に全身投与が必要なため、ペニシリン系、セフェム系を用います。

ウイルス性結膜炎

ウイルス感染による結膜炎の代表格は流行性角結膜炎と急性出血性結膜炎、咽頭結膜熱(プール熱)です。流行性角結膜炎は読んで字のごとく、感染力が強く人にうつるので“はやり目”と呼ばれています。急性出血性結膜炎は、アポロ11号が人類初の月面着陸に成功した1969年に世界的に流行したために、アポロ病とも呼ばれています。咽頭結膜熱はプールの水を介して流行するのでプール熱とも呼ばれています。 原因となるのは、流行性角結膜炎では主にアデノウイルス8型、19型、37型、急性出血性結膜炎ではエンテロウイルス70型とコクサッキーウイルスA24変異株、咽頭結膜熱ではアデノウイルス3型、7型です。

流行性角結膜炎と急性出血性結膜炎のいずれも、急に目やに(眼脂)が出、流涙、強い結膜の充血が起こります。 流行性角結膜炎では羞明(光が異常にまぶしい)などの症状が出ることもあり、ぶつぶつを伴う急性濾胞性結膜炎を呈し、また耳前リンパ節の腫れが見られ、発症後7日目頃から角膜上皮に濁りが現れます。これを点状表層角膜症といいます。ウイルスの潜伏期は1~2週間で、軽い風邪に似た症状はあるものの全身症状までには至りません。片目だけに起こっても時期をずらして両目に及ぶのがふつうです。ウイルス性結膜炎に共通して多く見られるように、眼脂はさらっとした水のようです。場合によっては角膜上皮混濁のために霧視(霧がかかったようにかすんで見える)が残ることがあります。また小児の場合やアトピー性皮膚炎と合併すると、結膜偽膜が見られる場合があります。結膜偽膜とはフィブリンという蛋白質や炎症細胞などからなる分泌物が膜状に固まって結膜にくっついた状態をいい、乳幼児の結膜炎でよく見られます。

急性出血性結膜炎のウイルスの潜伏期間は1~2日と短く、症状の特徴としては耳前リンパ節腫脹、急性濾胞性結膜炎、発症初期の点状表層角膜症が見られます。ここまでは流行性角結膜炎の症状とほぼ似ていますが、大きく違うのは結膜下出血で、70~90%の出現率です。咽頭結膜熱は夏風邪の一種で、感染はウイルスが結膜や咽頭へ直接浸入したり、飛沫(飛び散る唾液など)感染、手を介しての接触感染が中心です。ウイルスの潜伏期は5~7日で、症状としては発熱、頭痛、全身倦怠感などがまず起こります。のどが痛み、赤くなって扁桃腺も腫れてきます。目の症状では結膜が充血し、痛み、羞明、流涙などが現れ、最初は片目、次にもう一方に波及します。このほかに咳、鼻汁など風邪と同様の症状が出たり、下痢や腹痛、頚部リンパ節の腫れや痛みを呈することもあります。こうした症状は通常3~5日続き、後遺症を引き起こすことはありません。 以上、ウイルスが原因の3つの結膜炎の特徴と症状について述べましたが、検査と診断は次のように行われます。

流行性角結膜炎と咽頭結膜熱ではアデノウイルスを検出するために、結膜を綿棒で擦り取って試薬セットで検査します。ただし、ウイルスは100%検出できるわけではありません。急性出血性結膜炎ではこのような試薬がないので、血液のウイルスに対する抗体価を調べたり、結膜から採ったサンプルを顕微鏡で調べたりします。 エンテロウイルスもアデノウイルスも、これらを直接死滅させる特効薬はありません。ですから治療法は対症療法が中心となり、消炎薬と抗菌薬、ステロイド薬の点眼を行います。

ウイルス性結膜炎と診断されたときは、家族や友人にうつさないために、次のことを守りましょう。(1)手をよく洗う、(2)タオルや洗面器は家族と別にする、(3)洗濯物は家族の物とは別に洗う、(4)涙や目やににはティッシュペーパーを用い、ビニール袋にまとめて入れてから捨てる、(5)登校やプールは医師の許可を得る、(6)点眼薬は症状のあるほうの目だけに使う、(7)医師の許可があるまで通院する。(8)ウイルスは熱に弱いので、汚染されたもので煮沸できるものは煮沸する。