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見えないところがある(視野欠損)

図15:視覚情報の伝達路の障害と視野の関係 物を見ているときには、視線を合わせているところだけでなく、その周囲も見えています。この範囲を「視野」といいます。一般的に上下がそれぞれ約60度、外側が両目で約150度見えます。視野の見え方の異常は、視野の中に見えない箇所がある暗点、視野の右半分あるいは左半分が見えなくなる半盲、視野が狭まる狭窄の3つに分かれます。
視野欠損は、視野の中に見えない箇所がある状態です。しかし視野欠損を現す疾患の多くは緩やかに進行することと、両目で見ていて、片方の目が見えない部分を補い合うために、視野欠損に気づかないケースも多く見られます。
視野欠損を現す疾患の代表は緑内障です。緑内障は眼圧が上昇する疾患です。眼圧を一定にしているのが房水で、房水は毛様体でつくられて隅角にある線維柱帯を通って目の外へと排出されます。房水がつくられる量はほぼ決まっているので、排出される量によって、眼内の房水の量が左右されます。線維柱帯がいわば目詰まりを起こして房水の排出を妨げる場合と、虹彩の根元が線維柱帯にかぶさって房水の通過を妨げる場合、主にこの2つのトラブルで房水が排出されにくくなります。眼球に圧力が加わり、それに反発して眼圧が上がってしまいます。緑内障では眼圧の高い状態が長く続くため、視神経が障害されてしまいます。本人はすべて見えていると思っていますが、視野の中に見えない部分があるため、人にぶつかったりします。車の運転をしている人では歩いている人が見えず、急に飛び出してきたように見えて慌てて事故を回避するというようなこともあります。
特発性視神経炎では視野の真ん中が見えない「中心暗点」や、全体にかすみがかかるなどの症状が見られます。
虚血性視神経症は視神経に栄養を送る血管に循環障害が起こって、視神経が一時的に虚血の状態に陥るために症状が現れます。突然、視野欠損や視力低下が起こります。視野欠損は中心暗点や水平半盲です。
中心性漿液性脈絡網膜症では網膜の黄斑部という中心部に水がたまります。そのため中心暗点(視野の中心が暗く見える)や見たいところがぼやける、歪んで見える、小さく見えるなどの症状が現れます。過労やストレスなどが原因とされますが、詳しいことはわかっていません。自然に治癒する例も多く見られます。
加齢黄斑変性では中心暗点に加えて、物が歪んで見え、重症になると色もわからなくなります。この病気は加齢によって網膜が変性してきて、中心である黄斑部が障害されてしまいます。網膜色素上皮が萎縮していくタイプと、異常な新生血管が網膜の下に侵入してきて血液成分を漏出させたりするタイプがあります。いずれにしても黄斑部が腫れたり歪んだりするので、見え方に歪みや欠損が起こります。
夜盲で始まる網膜色素変性では早期から視野の欠損が現れます。
網膜剥離でも視野の欠損が起こります。
半盲は、目以外の、脳血管障害や脳腫瘍、内頚動脈瘤などが原因のこともあります。中心がよく見えないという症状は多発性硬化症でも見られます。眼科を受診してこれらの病気が疑われるようなら、早めにそれぞれの専門医を受診しましょう。(図15)