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加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)

網膜の黄斑部は、視力に大きな影響を及ぼす最も重要な部分です。この黄斑部に加齢による病変が出現するのが加齢黄斑変性で、滲出型と萎縮型の2つのタイプに大別されます。脈絡膜から新生血管(正常では存在せず、新たに発生してくる異常な血管)が生じるものを滲出型(図8)、血管新生を伴わないものを萎縮型と呼びます。

図8:滲出型の加齢黄斑変性の病変部

萎縮型は一般に進行が遅く、視力低下の速度もゆるやか、かつ軽度であるのが特徴です。ただしその1割は滲出型に移行する危険性がありますので、注意が必要です。滲出型は黄斑部の機能に大きなダメージを与えます。重い視力障害をもたらし、欧米では失明原因の第1位となっています。最近、日本でも増加傾向にあり、中途視覚障害の原因の上位を占めるようになりました。

症状は比較的ゆるやかに進行します。初期症状としては物が歪んで見える(変視症)、物が小さく見える(小視症)に始まり、症状が進むにつれて中心点が見えにくくなる(中心暗点)、視力低下へと進みます。放置すると失明に至ることも少なくありません。 検査でまず行われるのが眼底検査です。この検査で老廃物が蓄積していることを示す白い塊のドルーゼン(新生血管の前駆病変)や網膜出血などが確認された場合は、蛍光造影検査を行います。この検査では、腕の静脈から注射した蛍光色素が網膜や脈絡膜の血管に流れ込んで血管を浮かび上がらせるので、細かな新生血管の存在や新生血管からの漿液成分のもれなどもチェックできます。近年はOCT(光学的干渉断層計)を使う医療機関も増えてきました。OCTは赤外線の一種を使って黄斑部の断面像をリアルに映し出す装置で、黄斑部の浮腫や網膜剥離などの有無、新生血管の存在までくわしく観察することができます。

治療では、新生血管が黄斑部の中心に達していない場合は、レーザー光凝固という治療法で新生血管を焼き固めます。この治療で新生血管がかさぶたのようになって瘢痕化すれば、病気の進行は食い止められます。新生血管が黄斑部の中心にまで達している場合は、光線力学療法と呼ばれるレーザー治療が行われます。この治療法の最大のメリットは、網膜の正常な組織をほとんど傷つけることなく新生血管のみを破壊できる点にあります。ただし、1回だけの治療で新生血管が消えるケースは少なく、最低3回は必要といわれています。このほかにも抗血管新生薬の硝子体内注射など治療法はあります。 加齢黄斑変性の発症率は男性のほうが高く、60~70歳代の高齢者に多く見られます。原因はまだはっきりわかっていませんが、危険因子はいくつか指摘されています。1つは喫煙です。喫煙者では非喫煙者の約3倍多く発症するといわれています。屋外で働く人に多く見られることから、太陽光を構成する青い色の光がこの病気を促進させているとの見方もあります。このほかに、生活習慣病の危険因子が関わっているのではないかとの研究もあります。ですから、これらの危険因子を遠ざける生活を心がけることが第一です。予防に効果的であろうと思われる栄養素もいくつかあります。その代表がβカロテンやビタミンC・E、亜鉛などで、これらには老化を加速させる活性酸素を軽減させる作用があるためです。

いずれにせよ大切なことは、定期的に眼科で検査を受けることです。40歳を過ぎたら年に1回、50歳を過ぎたら年に2回は眼科検診に行きましょう。

加齢黄斑変性はiPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いた再生医療による治療が期待されている病気の一つです。